仕事を辞めて、ひとり愛車で日本横断の旅に出た友のこと

モノ・コトの断捨離

実に5年ぶりに、夫の幼なじみのSくんと再会した。Sくんは長年勤めた会社をあっさり辞めて、愛車でひとり、47都道府県を回る旅の途中だった。40代に入ってこれまでの生き方を見つめ直し、再スタートを切った彼を心から応援したい。

仕事をやめ、家族と別れ、お金も失っても、楽しく生きることに貪欲

プライベートなことなので詳細は控えるとして、この5年の間にSくんに起こった出来事は、聞いているだけで胸が詰まるような、客観的にはとても重い話だった。

それなのにSくんは、昔と変わらぬ陽気さで、当時のエピソードをまるで天気の話でもするかのように淡々と語ってくれるのだ。

 

昔も今も変わらない、すごく強い人。

自分はこんなにさらりと嫌味なく、辛い出来事を人に話すことができるだろうか……。

生きる力の源泉は、ガンで亡くなった父の記憶と生きがいの車やその仲間たち

どんな困難を前にしても、Sくんが常に前向きでいられるのは、かなり早い時期にお父さまを病気で亡くしたことと、もうひとつには、彼の生きがいである車や車関係の仲間の存在があった。

生きることへの執着

実は長らく勤めた会社を辞めたあと、Sくんは数ヶ月だけ人に頼まれて別の仕事についていた。

ところが、仕事場の環境に起因して、会社の偉い方がガンで亡くなったことを知ったとき、同じくガンでお父さまを亡くしていた彼は、『ここは長くいる場所ではない』と悟ったという。

幼いときから、お母さまとお姉さんの支えとなって生きてきた彼には、 “ガンで亡くなる” ことは何としても避けたいという想いがあったのだと思う。

仕事中に膝を痛め、ドクターストップがかかったこともあり、Sくんはその仕事も辞めて、全国を車で回る旅に出ることを決めた。

日本各地の車仲間と交流し、温泉をめぐる日々

今、日本全国を回っている最中も、Sくんは各地に点在している趣味友と交流したり、土地土地の温泉を堪能しているそうだ。

そのうちのひとつ、山梨の「ほったらかし温泉」で撮ったというスマホ画像には、露天風呂から紅葉した山々を臨む絶景が広がる。

 

自分たち夫婦が知らない日本の美しい風景を、Sくんはこれまでどれだけ目にしてきたのだろう。

軽々しく『うらやましい』というのはどうかと思ったが、思わず夫婦ふたりして「いいなあ〜」と声を上げずにはいられなかった。

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持ち家に未練なし? 二世帯住宅は賃貸に出す予定とも

「ところで、あのお家はどうするの?」

気ままな一人旅の話を楽しく聞いたあとで、気になったのは度々お邪魔したことのある二世帯住宅のこと。

 

訳あって、自分の家族とは長らく離れ離れで暮らしているSくん。3LDKの戸建てはどう考えても広過ぎる。

とはいえ、お母さまが下の階に暮らしているので、売却は難しい。

ゆえに、お母さまにも「上は賃貸に出したら?」と提案されているのだという。

 

賃貸に出すということは、Sくんのお母さまにとって、息子とは離れて暮らすことを意味する。

そのセリフをどんな想いでお母さまが口にしたかを考えたら、急に胸が苦しくなった。

 

『私のことはもういいから、お父さんの分まで、あなたの人生を生きなさい』という、お母さまのメッセージのようにも感じられたからだ。

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大きな持ち物は車のみ。ミニマリストになった今も捨てられないもの

今は旅の途中としても、日本全国を巡ったあとの予定は? と、Sくんにたずねると、彼の口から出てきたのは意外な答えだった。

それはひとつの企業に長く勤めてきた、これまでの日本的な彼の職業人生とは真逆の、ノマド的なライフスタイルだったからだ。

 

Sくんいわく、今後しばらくは定職につかず、海外に渡った友達のビジネスを手伝ったり、農家の繁忙期に食と宿を提供してもらい、その代わりに無償で農作業を手伝うWWOOF(ウーファー)をしたり、ペンションなどに住み込みで働くことを考えているのだとか。

 

家やお金に執着がなくなると、人ってこんなにも自由なんだなぁ、とSくんに教えられた気分だ。

「車一台で出て来たけど、それでもいらないものっていっぱいあるんだわ。使わない調味料とか、プラスチックケースにいっぱい。」

 

家やお金は手放しても、一緒に行った海キャンのときのように、使いきれないほどたくさん調味料を持ってきたんだね。

それは美味しいもの好きの彼らしい選択だった。

 

そういえば、昔Sくんのうちで、Sくんの家族とみんなで美味しいポトフをご馳走になったっけ。

 

一緒に笑いながら、涙をグッと目の奥にこらえた。

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