12月13日(金)、indigo la End 初の海外公演となる中国・上海のライブに参戦した。現地のファンの熱狂と興奮に呼応して、メンバーのパフォーマンスが指数関数的に熱を帯びる、両者の一体感が生んだ奇跡の上海ライブのレポートをどうぞ。
バンダイナムコ(Bandai Namco Future House)のライブ会場をインディゴファンが埋め尽くす

indigo la Endのライブは20時半スタートのところ、結局バンダイナムコに到着したのは開場の40分前。
入場はすでに開始されており、我々(今回は夫も同行)も急いでその列に続く。
この時点で、フロアにはキャパの半分以上のお客さんが詰めかけていた。
インディゴの中国公演があると聞いたとき、『一体どれくらいのファンの人が上海に来るんだろう?』と半信半疑だったことは確か。
ところが、自分のあさはかな想像を笑うように、ライブの開始時間までには、きっちりキャパ600ほどの会場が中国のファンの人々で埋め尽くされていた。
悲鳴のようなファンの歓声から一転、オープニング曲「花傘」でのハプニング
程なくしてメンバーがステージに登場すると、悲鳴にも似た歓声が会場に響き渡る。
歓声の大きさで言えば、これまで見てきたゲスやindigo la End の、どのライブよりも大きく力強い。
初めてゲスの極み乙女。のライブをZepp 東京で目にしたときの思い出が、一瞬脳裏によみがえる。
『メンバーがステージにいる!』ということだけで、胸がバクバクしていたあの頃。
それとよく似た感情が、ここにいる多くのファンの間に沸々と湧いているのを感じた。
上海でのオープニングは、初めて耳にしたイノフェスでの衝撃から、変わらず心かき乱されている一曲。
「花傘」の弦のイントロが響き、栄太郎さんのドラムが鳴り……『さあショーが始まる!』と感情がマックスになったその瞬間、
絵音さんが「まって」と曲を制止した。
一発目からのトラブルを暖かく見守る中国のファンの方々
自分がindigo la Endのファンになってからは2回ほど、ライブ中に曲が止まったことがある。
しかし、今回は大事な海外公演のしょっぱなだ。
MCで笑いを取ることも、事情を説明することも難しい。
どうやら機材トラブルらしく、スタッフが絵音さんに駆け寄る。
その瞬間、メンバーの表情が消えたように感じた。
ボーカルが客席に背を向けること自体異例なこと。
『早く直って……』と祈るような想いでステージを見つめ続ける。
だが、いきなりのハプニングでも、あの場で必要以上にざわつく人はひとりもいなかった。
皆、今か今かと演奏の再開を待ち望む。
えつこさんのナイスフォローが救世主に
そんな中、ステージが間延びしないよう、すかさずキーボードを弾き流すえつこさん。
いつもはMCのバックで静かに聴かせるピアノが、いかに欠かせないパートであったかを知る。
数分間の演奏停止に、これまでに感じたことのない大きな不安を感じたが、場の空気をダレさせないえつこさんの伴奏が心に滲みた。
栄太郎さんもあうんの呼吸で静かにハットを被せる。
いつしかピアノの旋律がクライマックスを迎えると、会場は再び地から湧き起こるような歓声に包まれた。
いつにも増して艶っぽい絵音さんの「ワン、ツー、スリー」によって、indigo la Endの上海公演が幕を開けた。
すべての曲のイントロで絶叫が巻き起こる、上海の熱き夜

まさかのトラブルを乗り越え、ドラマティックな「花傘」の演奏に続き、オープニング以上の悲鳴で迎えられた2曲目の「想いきり」。
コーラスが始まると、それまで溜まっていた聴衆のエネルギーが一気に解き放たれた。
中国のファンの期待値が、先ほどのハプニングで爆上げされた格好である。
体を揺らしつつ、食い入るようにステージを見つめるオーディエンス。
大好きな曲の連投で、自分もやっと先ほどの緊張感から解放され、上海まで来たことの幸せをじんわりと噛み締めた。
その後は「濡れゆく私小説」からのチューンが続き、「小粋なバイバイ」の印象的なギターリフでは、『あ、あの曲!』というお客さんのスイッチがオンになる。
会場も、やっとこの状況に体がなじんできたのだろうか。以降、曲を重ねるほどに、熱狂の沸点はどんどん高止まりするばかり。
この調子で進むと、今日はとんでもないライブになるかもしれない。
川谷絵音に「上海最高」と言わしめた観客のノリのよさ
アッパーな曲で観客の体を揺するかと思えば、ダウナーな旋律の散りばめられた「蒼糸」で聴取をグッと引き寄せる。
合間に中国のファンによる「カワイヨー」の掛け声にはほっこりさせられたが、それも海外のライブらしくていい。
だが、そこで油断したオーディエンス見透かすように「通り恋」が始まった。
こ、心がせわしなさ過ぎる!
この曲の時ばかりは悲鳴もそこそこに、川谷絵音の絶唱に誰もが耳をそば立てた。
有無を言わさぬ圧倒的なグルーヴ。美しくも心えぐるフレーズの数々。
日本でも上海でも、「通り恋」の存在感は突き抜けていた。
一転、「見せかけのラブソング」ではコーラスの “I love you” を皆が大きな声で口ずさむ。
絵音さんがつぶやいた「上海最高」も、リップサービスなどではない真実の言葉だったはず。
この時点で、ネットでしか見たことのないバンドが目の前で演奏してるという感覚から、indigo la End がリアルな存在としてオーディエンスの心と一体化し始めているのを感じた。
会場中が大合唱、上海のファンに火をつけた「瞳に映らない」からの「名もなきハッピーエンド」

続く「瞳に映らない」では、曲中の大きな拍手はもちろん、サビの大合唱と歓喜の声がライブハウス中を揺るがすほどに。
この流れで「心の実」から栄太郎さんのドラムソロで勢いが増し増しになり、「名もなきハッピーエンド」で絵音さんが
「シャンハーーーーーイ!!!」
と絶叫したのを皮切りに、オーディエンスとメンバーがパーンと弾けた。
「名もなきハッピーエンド」は日本でもライブでやれば必ず盛り上がるキラーチューンだが、 “はなればなれ〜” のサビの大合唱と合わせて、 “フォー” と “キャー” と “ウォー” の叫びがないまぜになった上海での異常な盛り上がりは、日本のライヴでは経験できないもの。
感情を露わにすることをためらわず、全力でこの場を楽しみ、熱狂する。
上海のお客さんは、その度合いがマジで半端ない。
自分もどんどんこの流れに引っ張られて、普段のライブでは絶っっ対言わない “フォッ” を連呼してみたり(笑)
観客が我を忘れて楽しんでいる姿に、ステージからこの光景を見ているindigo のメンバーがアガらないはずがない。
上海のファンとメンバーが生み出す一体感には、周りをすべてを巻き込んでいく、恐ろしいほどの吸引力があった。
みんな自由に歌って、踊って、それが許される空気感。
『どうかこの夢のような時間が終わりませんように』と、切に、切に願った。
「夏夜のマジック」で魅せた絵音・後鳥コンビの長い絡みにすねるティスがこの日のMVP
『上海ではこの曲が今日1番の盛り上がりだ』と思うたび、その記録を上塗りされる。
ライブも最終戦、2019年にTikTok発で再ブレイクを果たした「夏夜のマジック」は、その中でもダークホースだった。
ベースの見せ場で、後鳥さんと絵音さんが、顔を付き合わせて体を激く揺らすセッション。
いつもより長く続くなぁと見とれていたら、ティスさんが持ち場を離れ、『俺のこと忘れてね?』とでも言いたげに、絵音さんの横ですねるという悶絶の挙動に出た(笑)
その結果、絵音・後鳥コンビのセッションの “キャアアアア” も軽くかすむくらい、この場面で上海のライブの1番の盛り上がりと笑いをティスさんが総取り(笑)
いやぁ、これはアカン、反則だわ(笑)
ここまで16曲ぶっ通しで歌って盛り上げてきた絵音さんに謝ってください(笑)
「これが最後の曲です」に会場からは “NOOOOO!!!”「モットシャベッテ〜」のindigoロス炸裂
自分が立っていたのが真ん中よりやや後ろの方だったので、今回絵音さんのMC(といっても本当に最後の最後でほんの少し)があまり聞き取れなかったのだが、多分「また上海きます」的なことをおっしゃっていた。
それは重ね重ね、リップサービスではなくて、この日のバンドメンバーの総意だったと思う。
本編のラストソング、「結び様」での両手バイバイや、ファンの方から渡された手作りの横断幕に「ありがとう、ホントに」とお礼を述べるところなど、絵音さんのいつになく素朴な感情の発露を見られたこともうれしかった。
集合写真の後、ステージを去っていくメンバーを見送ると、すかさず手前にいた男性が「アンコール」と大きな声を上げる。
その声に周りのファンもすぐさま呼応して、会場内は「アンコール」の大合唱に包まれた。
1曲だけのスペシャルなアンコールは自分得の「さよならベル」
再度indigo のメンバーがステージに姿を表すと、絵音さんの “One more song. ” の掛け声で「さよならベル」のギターリフが鳴った。
11月の関内ホールに続き、こんなに短い間隔で自分の中のindigo la Endランキング上位に入る曲が聴ける幸せ。
この先どんなに歳を重ねても、ティーンエイジャーだった頃のピュアな感情を一瞬で思い出させてくれる曲。
「さよならベル」を上海のアンコールに選んでくれて、ホント “谢谢(シェイシェイ)” !
(ちなみに、絵音さんがいろんな曲の最後でつぶやく “しぇいしぇい” がかわい過ぎて死んだ……。)
indigo la End の魅力と上海のファンのパワーを見せつけられたライブ

1曲目の「花傘」でいきなり曲がストップしたときにはどうなることかと心配したが、出鼻のトラブルを補って余りあるほど、上海のライブではすべての曲がリード曲のように迎えられ、時間を追うごとに客席のうねりは大きくなっていった。
これは今回のツアーで演奏された曲の多くが、「濡れゆく私小説」という魅力的なアルバムの作品だったということと、以前からの人気曲がいまだ色あせていない証左である。
ほぼMCのない、かなりストイックなライブだったのにもかかわらず、上海のファンの方たちは大いに楽しんでいた。
こうしてレポートを書いてはいるけれど、あの場の熱狂と一体感がうまく言葉で伝わる気がしない。
だって難しいこと抜きで、底抜けに楽しかったから。
いつか再びindigo la Endの上海公演があるならば、またあの熱気の渦に自らの身を浸したい。
その時まで上海よ、 “再見!”
indigo la End 上海ツアー・セットリスト
- 「花傘」
- 「想いきり」
- 「はにかんでしまった夏」
- 「小粋なバイバイ」
- 「鐘泣く命」
- 「砂に紛れて」
- 「秋雨の降り方がいじらしい」
- 「蒼糸」
- 「ラッパーの涙」
- 「通り恋」
- 「見せかけのラブソング」
- 「煙恋」
- 「瞳に映らない」
- 「心の実」
- 「名もなきハッピーエンド」
- 「夏夜のマジック」
- 「結び様」
アンコール:「さよならベル」