自身のバースデーイベントでは、一夜にして5,000万超の売り上げを記録したレジェンド。歌舞伎町のナンバーワンホストという経歴だけに飽き足らず、独立して店を立ち上げ、ヘアオイルやサプリのプロデュースなども手がけるなど、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍ぶり。
ブロンドのロングヘアに甘いマスク、陶器のように滑らかな肌と巧みな話術の持ち主は、現代ホスト界の帝王、ローランド(ROLAND)氏。
その御仁の自宅マンションが動画で公開されて話題となっている。
彼の自室に並ぶのは “無駄のない” “美しい” “とびきりの” 逸品のみ。ミニマリストの美意識が濃縮還元された空間は、ただただ美しい。
生活感を徹底排除、厳選された美しい物のみのリビング
高層ビルの夜景きらめくタワーマンションの一角。カリスマホスト、ローランド氏の新居である。
ワイドサッシの向こうには、蒼く染まった大都市トーキョーの高層ビルが瞬く。
この眺望が一番の装飾であるかのように、室内は白と黒のモノトーンを基調とする潔い空間。
「超嫌い」 というコンセントを室内から排し、 「見ると現実に帰ってしまう」スイッチ類も、壁面にしつらえた専用のボックスに隠してしまうミニマリストぶり。
そうやって極限まで無に近づけたシンプルな空間に、スクエアなフォルムの黒の一人掛け(カッシーナ)が映える。
きらびやかなイメージのホストクラブを主戦場とする人の、意外な一面を見せられた気がした。
サイドテーブルにメモ帳を置く理由

さらに驚かされるのは、ソファ近くに揺らめく暖炉の炎を見たとき。ここが都心のマンションの一室であることを忘れさせる光景だ。
ローランド氏いわく、ひとり静かに暖炉の火を眺めていると、心が和むのだという。
店のオーナーとしての責任と、顧客を常に満足させ続けるプレッシャー。オンタイムの心労は察するにあまりある。
その分、心を無にして炎を眺める瞬間は、何ものにも代え難い大切な時間となる。
携帯は人の人生をジャンクフードのような時間に変える
動画はローランド氏のミニマルな新居の紹介という体(てい)ではあるが、彼が発する言葉の端々に “時間” に対する確固たる哲学が透けて見えた。
例えば、
ネット検索は1時間以内に制限
ペン付きのメモ帳(アブラサス)にその日調べたいことをリストアップする。あらかじめ検索時間を制限し、余計なことは調べない。
情報はメモ帳に控える
調べたことはスマホではなくメモ帳に控える派。通知やネットニュースに気を取られ、控えておくことを忘れてしまうのを防ぐため。
満員電車に乗っていると、人と人とのわずかな隙間を見つけては、スマホをせわしなくスクロールする人たちばかり。スマホはブラックホールのごとく、現代人から自由な時間を巻き上げていく。
そんな光景にも、もはや疑問を持たなくなって久しい。
だがローランド氏は違う。
「本当に携帯っていうのは人の人生をすごくジャンクフードのような時間にして勿体ないなと思って」
ローランド
隙間時間を惜しんでは、スマホをついチェックしてしまう我が身に痛いひと言だ。
1用途=1アイテム、所持品は “とびっきり” のお気に入りだけ

キッチンに洗面、玄関、書斎とカメラが移動する中で、ローランド氏が一点一点、お気に入りの品々にまつわるエピソードを語ってくれる。
どの収納の扉を開けても、たっぷりの余白とともに、愛用の品々が展示中のアートのように並ぶ。
実はこの動画を見る前は、ホストという職業柄、洋服や靴などの服飾品は溢れるほどお持ちなのでは?と勝手に想像していた。
ところが、カジュアルな靴、ご近所ばき、スポーツシューズが各1足ずつ収められたシューズクローゼットからもわかるように、ローランド氏はひとつの用途にひとつのアイテムしか持たないのが信条。
その理由は 「とびっきりの1個を大事にしたいから」。
ミニマリストなら、この言葉には首を大きく縦に振らざるを得ない。
とびっきりの1個で所持品を構成するメリット
“とびっきりの1個” に持ち物を絞ることで得られるメリットは何だろう?
そのレベルで気に入る物には早々出会わないから、待ちの間にお金が貯まる。
そのうち『これだ!』という出会いのタイミングで、惜しみなく “とびっきりの1個” に資金を投入することができること、だろうか。
待ちに待って手に入れたお気に入りは早々に飽きることもなく、値段に見合った上質な物であれば長く愛用することも可能。
何せひとつしかないから、ちょっとした汚れやダメージにも早く気づいて、いつも綺麗な状態を保つことができる。
洋服もまさかの1着のみ!?
そうは言っても、である。
「これが俺の全ての服が入っているクローゼット」
と、ローランド氏がドヤ顔で開けた扉の中には、黒のジャケットが一着のみ。
……カメラさん、笑いをこらえるのに必死(笑)
もちろん、仕事着はまた別で、あくまでプライベート用ではあのジャケット1着のみということだろうけど。
「ジョブズも言ってたけど、世界に衝撃を与えようとかいろんなアイディアを考えようと思ったら、服を選ぶ時間があまりにも無駄過ぎる」
ローランド
ここでもやっぱり「時間」がキーポイントとなっている。分刻みのスケジュールに追われているローランド氏ならば、この境地に達するのも不思議ではない。
世界に目を向けてみれば、テック界の重鎮たちもそのような思考の持ち主が多いではないか。
ここまで服の枚数を削ることはできそうもないが、自分も服の数を絞って、着まわしの型を決めると服選びが楽になることを実感している。
エルメスのヴィンテージトランクひとつでどこにでも行ける

クローゼットに話を戻すと、唯一の服というジャケットの下に、クラシックなアイボリーのスーツケースが置かれていた。
60年代のヴィンテージで、味のあるデザインとスクエアなフォルムがたまらなく好きだというエルメスのもの。グッドルッキンなスーツケースに、ローランド氏も思わず顔がほころぶ。
これひとつで何処へでも行けるという気にさせる、身軽さの象徴だ。
ナンバーワンホストとして這い上がった経験と、その先に得た富だけでは心を満たせないという現実。
お気に入りのトランクひとつで十分という自負は、敗者と勝者、ふたつの世界を知りえた者の人生哲学でもある。
無印の1000円の化粧水も300万のブランドベッドも同じ価値観で選ぶ
ローランド氏の自宅にある物は、成功者らしい上質な逸品ばかり。
だが中には『え、以外!』と驚くような庶民的なアイテムを、ほかのラグジュアリーなものと同列で紹介しているのがユニーク。
その麗しい見た目から、スキンケアもさぞかし高級なラインで揃えているのかと思えば、洗面所の棚にずらりと並んでいたのは、既視感のある “あの” お品たち……。
そう、ローランド氏が愛用するスキンケア商品は、ほぼすべてが無印良品のもの!
これをギャップ萌えと言わずしてなんと言おう。
ここまで「カッシーナ」「エルメス」「モンブラン」と、錚々たるブランド名を耳にした後で、いきなり身内感溢れる「無印良品」とは(笑)
かと思えば、寝室の紹介では値段を見ないで決めたという300万のベッドが鎮座する。
たとえ1000円の化粧水であっても、300万のベッドであっても、「心が動いたら値段は関係ない」という彼の持論そのままの物選びが興味深い。
ローランド氏の自宅から学んだこと
この動画から学んだことは、
- 本当に好きなものだけに絞ると物欲が満たされて物の数が激減する
- 値段にとらわれない物選びの確固たる基準を持つ
ということ。
そうすることで、住まい全体に統一感が出てきて、自宅が最高にリラックスできる空間へと変わっていく。
捨てて、捨てて、不要な物がなくなった先には、自分の想う “とびっきり” の品だけをほんの少し持つ身軽な暮らしが理想。
ローランド氏の自宅は、そんな想いを抱く自分に火をつけた導火線である。