とあるサイトの小さな平屋間取りに、身軽に暮らす家の真髄を見た。夫婦ふたり暮らしになったら持ち物は最小限に、コンパクトな平屋でのんびり暮らすのも悪くない。
LDKは約9.4帖。狭さを感じさせない秘密は “濡れ縁” のある坪庭

物件ファンという、変わった間取りやレトロかわいい物件を紹介してくれるサイトが好きでたまに眺めている。
住まいへの愛がじわっとにじむ紹介文は、文体から察するに間取り図ナイトで有名な森岡友樹さんによるもの。
息子が小学生のときにハマった「間取り図大好き」。クスッと笑える間取りがたくさん。
そのサイトの中から自分が目をつけたのが、30㎡のちいさな和の平屋だ。
戸建てにしてはかなり狭めな約9.4帖のLDKのある平屋。
実際の床面積を変えることはできないが、そんな時に有効な視覚のマジックがこの御宅でも使われていた。
そのトリックはとてもシンプル。
LDKの奥に坪庭を設けることで、室内と室外の境界があいまいになり、視線はLDKを抜けてその先の坪庭へ。
屋内空間に外の奥行きがプラスされることで、実際の室内よりも広く感じるというわけだ。
濡れ縁は第2のリビング
かつての日本家屋には付きものだった濡れ縁は、今風に例えるなら “アウトドア・リビング” 。
坪庭は板塀で囲われており、外からの視線は気にならない。天気のよい日はここでまったりお茶を飲みつつ読書をしたり、季節の移ろいを感じながら洗濯物を干したり……。
ごく小さな “坪庭” は、手入れの手間も最小限。これくらいのサイズ感なら、ズボラな自分もなんとか手入れできそうではないか(笑)?
狭い家では “一台二役”、”兼用” がキーワード
LDKが狭いと、そこにソファとリビングテーブル、ダイニングテーブルのセットを置くのも大変だ。
どうするのが正解かといえば、一番手っ取り早いのは家具の兼用である。あるいは家具でないものを家具として使う。
例えばこちらの御宅にはダイニングテーブルはなく、キッチンと一体化したカウンターが食卓テーブルの代わり。
省スペースになるのはもちろん、調理したものを配膳する必要がなくなるのが素晴らしい。
キッチンの天板の一部をテーブルに見立てると、キッチンの天板を拭く=ダイニングテーブルを拭くことであり、家事の時短にもつながる。
この御宅のLDKにはコンパクトなソファとセンターテーブルが置かれているが、ソファダイニングセットなどの “一台二役” の家具を利用するのも狭い部屋には有効な処方箋となる。
移動するだけの廊下はいらない。無駄な空間を徹底排除
玄関の真横にすぐキッチンという間取りからもわかるように、移動するだけの廊下が見当たらないのもこの家の特徴。
全部で30㎡しかない狭い空間だからこそ、徹底した “実利主義” が空間の割り振りにも見てとれる。
寝室は3帖あればOK⁈
LDKが9帖ちょっとの広さというのは、賃貸ならばそこまで珍しくはない。それよりびっくりしたのは、寝室になる和室がたったの3帖しかないこと!
寝室も廊下と同様、使用頻度を天秤にかけて、
『ふたりなら3帖もあれば布団敷けるよね〜(肩ポンポン)!』ってなノリを感じてしまう(笑)
ただしその布団、従来のボリューミーなタイプでは、こちらの和室の収納には収まりきらないかも。
パタパタと小さく畳んでしまえるマットレスタイプの敷布団か、軽くて薄い敷布団などが適しているだろう。
使用頻度が低い客間はロフトで十分
毎日使用する寝室でさえこの調子だから、ゲストの客間はもちろん用意がない。
そんなときこそロフトが物をいう。もちろん、
- ロフトを物置にしない
- お客さまの布団は貸し布団と割り切る
ことは大前提だ。
家に泊めるくらいの間柄なら、住人のミニマリスト的性向はゲストもよくわかっているはず。もはや客間がロフトであっても大して驚かれないだろう(笑)
大人数の場合や高齢のゲストには対応できないが、その場合はホテルなどを別に手配して対処する。
収納に収まるだけの服の数に絞る
間取り図で見たところ、服の収納に使えそうなのは押入れ隣のスペース。多分ここが小さなクローゼットになっているのだろう。
大人ふたりの服をしまうには心もとない大きさである。オンシーズンの洋服は厳選に厳選を重ねた数着のみに絞る必要がありそうだ。
オフシーズンの服に関しては、クリーニングの保管サービスなどを利用するのが現実的。家の中に服を置いておかなければいけないというルールはないのだから。
小さな平屋間取りのデメリット
物が少ない夫婦ふたり暮らしなら、ぜひとも住みたいこちらの平屋。デメリットをあげるとしたら、キッチンからお手洗いが見えそうなこと。
調理をしていて、お手洗いへの出入りがダイレクトに見えるのはちょっと、ねぇ。
それからキッチンにタイルを使うなら、システムキッチン背面の収納棚の部分だけでいいかな。コンロ周りにおしゃれなモザイクタイルを貼ったら、掃除が超大変‼︎ 持ち家時代の反省からすすめません。
洗濯機とトイレ本体が隣り合わせなのも、気になっちゃう人は多いかも。
狭い家に住むことで、無駄な時間を省いて自由な時間が生まれる
常識的に考えるといくつか目をつぶらないといけないデメリットがあることも確か。だけど、これぐらいコンパクトで無駄のない動線って、家事の時短の面ではメリットしかないない。
人の手を借りないで夫婦共稼ぎで大きい家を維持するって、自分のようなズボラーにはまさに罰ゲーム。
それなら家自体を小さくして、家のメンテや家事に関わる時間を削る方が手っ取り早いと思ってしまう。安息のための家に振り回されて、かえって疲れてしまうなんてナンセンス。
これからの家探しでは、 “身軽に暮らせる空間か?” という視点がますます重要になってくるだろう。