子どもの手も離れてきて、そろそろ教育費に備えなくては!と、ネットの求人媒体をスクロールしていた数年前。ああ、あの頃の自分に戻れるなら、「自分が没頭できることを仕事に選んだ方が幸せだよ」とそっと耳打ちしてあげるのに。
40歳主婦、英語を活かして再就職を目論むも……
『10年以上仕事のブランクがある主婦が、パートや派遣で仕事を再開するなら、どんな仕事を選ぶべきだろうか?』
関東に引っ越して1年が経ち、そろそろパートでも始めるか……と重い腰をあげたとき、最初に思い浮かんだのは、独身時代に慣れ親しんだ業界の仕事。
経験のある職種なら、ブランクはあっても自信を持って面接に臨めるはず。
でも、その仕事は土日祝も基本仕事で、平日も9時過ぎまでのシフトがある業種。再就職を考えた当時は子どもたちもまだ小学生と中学生だった。
勤務時間や休日がどう考えても子持ちの主婦に適さない。ゆえに、その業種は再就職先の候補から外れた。
ではそれ以外に何ができるかを考えたとき、業界にはこだわらず、人より多少は得意と言える “英語” を活かした英文事務を派遣で探すことにした。
人より得意なことが “天職” とは限らない。

昔取った杵柄で、履歴書にTOEIC915、国連英検A級と登録しておくと、派遣会社からいくつか英文事務の紹介があった。
ところが、紹介される仕事と言えば、納期や数字とにらめっこで対外的なやり取りを臆せずこなせる営業事務や貿易事務ばかり。 “さばき力” のない自分には、どう考えても合わない職種だ。
英語がちょっと得意なくらいの、かつての自分にできそうな仕事はなかなか見つからない。
そこで派遣で仕事を探すのは一旦中断し、直接雇用のパートで英語を活かす仕事についたのだが、この会社で足掛け3年パート→契約社員として働いてみて、ある重大なことに気づいてしまった。
『……自分、思ったほどこの仕事好きじゃないっす!』(笑)
当時の仕事は、英語に加えて、未知の分野の調べ物をいとわない忍耐力と集中力が必要とされるもの。自分の性格とは正反対の、几帳面な人向きの仕事だったのだ。
忍耐力も集中力もない上、唯一心の支えだった英語すら、のめり込むほどに情熱を傾ける対象ではなかったと知ったとき、広大な砂漠にひとり取り残されたような気がした。
こんな兆候があれば危険! 続けるべき “天職” かどうかを見極めるヒント

一見、自分の得意なことに見えて、実はそうでもなかったかつての仕事と今の仕事を比べてみると、以前の仕事には下の4つの兆候があったことに気づく。
あの頃は、
- 勤務中、何度も居眠りしそうになる
- 同僚や上司から仕事ぶりを褒められない
- 休日に仕事のことを考えるなんてまっぴら!
- 毎朝憂鬱
なことが常態だった。
❶ 勤務時間中、異常に眠い

以前の職場ではとにかく毎日眠かった。昼食後、午後の2時から3時あたりが超絶ツラい。
今の職場でも週5で働いているが、居眠りするほど眠くなった記憶はほとんどない。睡眠時間でいえば、以前の方が足りていたはずなのに。
当時は眠気を覚ますために、しょっちゅうトイレ休憩に立ったり、デスクにはブラックコーヒーと甘いおやつが欠かせなかった。
思うに、今の仕事はどちらかというと自分の頭で一から考えることが多く、その対象も好きなものであるため、時間の過ぎるのがとても早く感じるのだと思う。
❷ 仕事で褒められることがない

その仕事が天職かどうかを見極める上でわかりやすい指標が2番。
好きではない仕事の場合、人の期待値を超えるような成果はまず出ない。つまり、会社で人に褒められることがない。
もし好きな仕事であれば、自分が納得できるレベルまで磨き上げようと躍起になるから、同僚や上司から「さすがだね」と褒められる機会も多い。
それでまた頑張ろうという気になり、さらに高い次元を目指すという好循環が起こる仕事は “天職” と思って間違いない。
結婚前の職場や、専業時代に副業的にやっていた仕事では、色々な方に感謝されたり実力を認めてもらえたが、転職前のあの仕事だけは、人から褒められた記憶なく辞めることになってしまった。
それが仕事に対する自分の適性の客観的な答えである。
❸ 休みの日に仕事のことは一切考えたくない

3番も今の仕事が “天職” かどうかを試す、わかりやすいリトマス紙。
オフの日にも『これ、仕事に活かせないかな?』という視点でつい物事を見てしまうなら、それは “天職” である可能性が高い。
反対に、休みの日くらい仕事のことは忘れたい!と、頭から完全シャットアウトの場合、オンの日のパフォーマンスを高めるためにあえてそうする訳ではないなら、その仕事はあなたの “好き” とは違うものだ。
❹ 毎朝がdoomsday(この世の終わり)
4番は好きな仕事であっても朝が弱いと憂鬱だったりするので絶対ではないが、毎朝憂鬱とあれば、それが “天職” である可能性は低い。
仕事選びは “得意なこと” より “好きなこと” 目線で選ぶ方がうまくいく
……と、それほどまでに自分には合っていないと思われる仕事だったが、なんだかんだと3年近くも続けていたのは、給与や福利厚生がよかったことと、職場の方が皆大人で、人間関係において嫌な思いをすることが皆無だったから。
40代で、また新しい環境に飛び込むというのはとても勇気がいる。
だが、このままズルズルと、あの穏やかな環境で自分を甘やかしていたら、あとで振り返ったときに絶対後悔する!という確信だけはあった。
子ども時代までさかのぼって、自分が夢中になれることの傾向を見極める

そこで、これが最後の転職と心を決め、上の4つの兆候が起こり得ない職種で再就職しようと決心。
子ども時代からさかのぼり、『これをやっているとあっという間に時間がたってしまう』『今より給与が下がってもやりたいと思える』くらい “好きなこと” をいくつかピックアップして、そこに狙いを定めて仕事探しを再開した。
そうすると、給与ベースで仕事探しをしていたときには引っかからない、 “好き” ベースの仕事が引っかかるようになってきた。
『あー、これ自分にぴったりだわ』と確信できた求人は、今の仕事が初めてかもしれない。
“天職” になりそうな仕事に出会うことで、気持ちも前向きに
そのおかげか、ときに自分の不甲斐なさに凹むことはあっても、今の職場で『辞めたい』と思ったことは一度もない。
天職と思うまでにはまだ少し時間がかかりそうだけど、仕事にもっと磨きをかけたいという欲はある。
一日の大半の時間をそのような前向きな気持ちで過ごせるようになったことは、精神衛生上とてもよい。
それはこの先いくつになってもやりたい仕事?
給与とやりがいを天秤にかけて、自分は圧倒的に “やりがい” や “好き” を優先したことでハッピーになれた。
かつての自分のように、再就職に悩んでいるアラフォーの方には、 “この先年齢を重ねても好きだと確信を持ってできる仕事” という目線で仕事探しをするのもあり、とお伝えしておく。